詐欺被害に遭ったとき、「どこに相談したら良いのかわからない」という声はよく耳にします。そんな中でも主に思い浮かぶのが、警察と弁護士ではないでしょうか。

警察に詐欺の相談するとどんなメリットがあるのでしょうか?また、弁護士など他の専門家に相談するのとは何が違うのでしょうか?

今回は、詐欺被害に遭ってしまったときに警察に詐欺の相談することのメリットや、相談する際の注意点について解説します。すでに今詐欺被害に遭ってしまっていて、どこに相談したらいいのか、違いがわからない方はぜひお読みください。

警察にどんなことが相談できる?

まずは、警察にどんなことが相談できるのかを確認しておきましょう。よく「警察に詐欺の相談に行ったけど対応してくれなかった」という声を耳にすることがありますが、警察が対応できる事件には一定の条件があるのです。

刑事事件であること

「民事不介入」という言葉を耳にしたことがある方も多いかもしれません。警察に詐欺の相談に行ったとき、相談内容が「民事」である場合は、「警察が介入できる内容ではありません」といって対応しれくれないことがあります。

警察では、刑事事件のみ取り扱いが可能です。刑事事件というのは、簡単にいえば、警察や検察といった国家機関が介入して捜査を行い、犯罪を犯したと思われる人を逮捕したり起訴して、刑事裁判にかける手続きをとる事件のことです。

参考サイト:法務省:刑事事件フローチャート

一方民事事件というのは、私人間の紛争です。お金を返してくれない、離婚でもめている、など、私人間で起きるトラブルを民事事件と呼び、一般的に警察や検察などの公的な捜査機関は介入しません。民事事件は基本的に、当事者たちで解決することが求められているものです。

より解決をスムーズに導くために、弁護士に相談したり裁判をおこしたりして、第三者である裁判官にトラブルについて判断してもらう、というような流れになることもあります。

「誰かに騙されてお金を奪われた」という詐欺被害の場合には、刑事事件か民事事件か、もしくはその両方に当てはまるかということになります。状況によっては、どちらにも当てはまらないことも。

そしてもし詐欺罪という犯罪の要件を満たせば、詐欺罪として刑事事件になります。詐欺被害で相談に行く場合は、相談の内容が「詐欺罪」などの何らかの犯罪と言えるかどうかをまず確認する必要があります。

緊急性が高いもの

警察は国家権力です。国家権力を発動させるためには、それなりの理由がなければなりません。一般的に、緊急性が高いものに対しては、警察に詐欺の相談しやすいといえます。

例えば、先日話した人が詐欺師のようだ、というだけで警察に詐欺の相談に行ったとしましょう。このとき、実際に詐欺の被害にあってお金を奪われた、または奪われそうだ、という場合ならば警察も対応してくれる可能性が高まります。

しかし、なんらお金を奪われたわけではなく、「どうも今投資に誘われているが詐欺っぽい」というような漠然としたことだけだったりすると、警察は動いてくれません。というよりも動きようがないのです。

この状態で警察が動くことは、被害が実際に生じていないのに国家権力が動くということになります。そうすると、本当に良い投資物件を人に勧めたいとしても「詐欺罪で逮捕されてしまうかもしれない」となって、萎縮してしまいます。

それはそれで、結果的には市民の生活に良くない影響を及ぼします。警察の役割は、予防ではなく、実際に被害が起こってからというわけです。

しかし、警察に詐欺の相談して返金を期待するのは難しい

詐欺被害に遭ってしまった人が一番求めるのが、「返金してほしい」ということ。詐欺師に支払ったお金が返金されれば、受けた被害をなかったことにもできます。しかし、警察に詐欺の相談にいったとしても、返金まで求めるのは難しいものです。

あとから詳しく書きますが、警察に詐欺の相談に行ったとき、具体的にどんな対応を求められるかというと、詐欺師を逮捕する、または告訴するための告訴状を受理するということになります。

逮捕や告訴が受け付けられたとしても、それだけで直接返金につながるわけではありません。返金を求めるためには、弁護士に依頼し、民事訴訟を起こしたり、内容証明を送ったりして返金を求めるといった方法になります。

具体的に警察に詐欺の相談する時の選択肢

先ほども少し書きましたが、具体的に警察に詐欺の相談するとき、一体どんなことを相談することができるのでしょうか?大きく分けると、単なる相談・被害届を提出する・告訴状を提出するという3種類に分かれます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

単なる相談

警察では、被害に応じてそれぞれの担当部署を設けています。このほかにも、電話やメールで相談できるような窓口を設けて対応しています。

被害届を出すほどの被害は出ていない、今遭遇しているこの状態が詐欺被害と言えるのかがわからない、といった曖昧な状態の段階では、まず「相談する」という選択肢があります。

詐欺被害について相談する場合は、「#9110」という専用のダイヤルが用意されていますので、そちらに電話をかけて相談しましょう。この段階では、受けている被害がどんな犯罪に該当するのか明らかになっている必要はありません。

わからないことがあれば何でも質問してみましょう。

被害届を出す

警察といえば、被害届を出して犯人を逮捕してもらうという流れを連想する人も多いかもしれません。自分がこんな被害にあったという被害届を警察に出すことによって、警察が捜査の必要性を判断し、それによって犯人の捜査や逮捕につながることがあります。

しかし、実は被害届を受け取ったからといって、警察には必ずしもその事件に対して捜査をしたり、犯人を逮捕したりする義務がないということをご存知ですか?確実に警察に動いてもらいたいならば、被害届ではなく告訴状を提出し、実際に警察に受理してもらうのが確実です。

告訴状を出す

詐欺被害に遭ってしまったとき、なんとしても犯人を痛い目に合わせたいと思うものです。また、犯人が逮捕されて有罪になれば、それだけ返金を求められる可能性が高まるかもしれません。

もちろん犯人に資金がなければ返金は難しいかもしれませんが、逮捕・起訴されることで、犯人に対して現実的な対策を期待することができます。そしてそのために有効な方法が、警察に告訴状を提出することです。

告訴状を受理した場合、警察にはその事件を捜査し、犯人を逮捕した後は、起訴するかしないかを被害者に報告するという義務が生じます。ただ、逆に言えば、それだけ義務が生じるのですから、簡単には受理してくれません。

「告訴状を出したのに、警察から数ヶ月音沙汰がない」という話を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。警察に動いてもらうことは実は容易ではないのです。

警察が対応してくれない時に考えられる原因

警察が動いてくれないことは少なくありません。警察官も数が限られていますから、全ての告訴状を受理して対応するというのは物理的に不可能なのです。

ただ、対応するかしないかという判断はある程度明確な基準を設けて判断されています。もしも告訴状を受理してくれない、相談に行ったけれど「警察では対応しかねる」などと言われてしまった、という場合は、以下の原因が考えられます。

民事事件だった

先ほども民事不介入のところで触れましたが、警察は基本的に刑事事件しか対応できません。例えば詐欺罪だと思って相談に行ったとしても、単なる痴話喧嘩だと判断されてしまえば「民事事件なので対応できません」といって返されてしまいます。

刑事事件だと言えるためには、詐欺師の行為や今の状況が、それぞれの法律に定められている構成要件(その犯罪だと言えるための条件のようなもの)に該当すると言える必要があります。この構成要件は、犯罪によってその内容が異なりますが、詐欺罪の場合は以下の通りです。

犯人が不明である

一般的に、詐欺は解決が難しいとされています。その理由の一つが、犯人がわからないことが多いということ。詐欺師は、ある程度詐欺を働いたら、すぐに身を隠して行方をくらませます。それが個人であろうが、会社であろうが同じです。

そして、詐欺だと気づかれるのを少しでも遅らせるために色々な手を使うのです。実際に被害者が「詐欺にあったかもしれない」と思って詐欺師に連絡を取ろうとしたとき、教えてもらった電話番号にかけても電話が繋がらない・会社に電話をしたら「退職しました」と言われた、ひどい時には会社の所在地だと言われていた住所自体が存在しなかった、というケースは枚挙にいとまがありません。

犯人がわからない場合、警察としても対処のしようがありません。「国家権力を使って探し出してほしい」と思うのが一般的な被害者側の心情ではありますが、やはり全ての事件に対して国家権力を使って犯人を探し出すということは不可能に近いこと。

もちろん、被害者が多い、被害額が大きいなどの悪質な事件に対しては、警察が犯人の居所を突き止めることを期待できる場合もあります。しかし、なかなか難しいのが現状です。

被害が軽微である

被害額がどれくらいなら警察が動いてくれるのか、という明確な数字は公表されていませんし、そもそも基準自体があるのかもわかりません。しかし、例えば騙されて数千円の被害にあった、というような場合には、警察が動いてくれることはほとんど期待できないでしょう。

ただ、その判断は被害額だけではなく、そのほかの状況とのバランスで行われます。「悪質だ」「放置しておけばほかにも被害者が出る可能性がある」などと警察が判断すれば、何らかの対応を取ってくれる可能性はあります。

被害届や告訴状の内容が曖昧

被害届や告訴状を提出することで、自分がどんな被害にあっているのか、どんな犯罪に巻き込まれたのかということを警察に伝えることができます。しかし、この書類の内容が曖昧だったり、的を得ないことが書かれていて読みにくかったりすることも、警察が動いてくれない理由の一つになり得ます。

被害届や告訴状には、先ほども書いたような「受けた被害がどんな犯罪を構成しているのか」といったことをしっかりとわかりやすく記載することが重要なポイントになります。

証拠がない

警察署に出向いて被害届や告訴状を出したいと相談したとき、ほぼ必ずと行っていいほど確認されるのが、「被害の証拠があるか」です。証拠も何もない状態では、警察は動いてくれません。申告されている被害が本当にあったものなのか、どれくらい深刻な被害が生じているのか、客観的に把握できないからです。

そこで、警察に詐欺の相談に行く際には手持ちの証拠を全て持って行きましょう。「これが証拠になるのかわからない」と判断に迷うことがあるかもしれませんが、判断に迷ったら全て持って行くようにしてください。必要なかったり、証拠として認められないと警察が判断すれば、そこで指摘してくれます。

弁護士を同行させることが有益

警察に対応してもらうためには、本当に詐欺被害が生じているのか、それが刑事事件と言えるのかいといったことを説得力を持って警察に説明する必要があります。

しかし、実際の被害に関して「この状況は刑法にいうこの構成要件に該当するため、詐欺罪といえます」というように法律的な観点から説明できる人は多くありません。そのため、うまく説明できずに悔しい思いをする人もいます。

そうならないためにも、弁護士を活用することをお勧めします。弁護士に一旦相談し、警察に弁護士を同行させるのです。法律の専門家である弁護士が間に絡んでいることにより、警察はその被害が法的にも問題があることを理解してくれます。

それに、弁護士があなたに代わって警察にしっかりと被害状況を説明してくれます。

警察に詐欺の相談しても返金は期待しにくい。ならばメリットはどこにある?

このように、警察に詐欺の相談したり、被害届や告訴状を提出したとしても、だからといって詐欺師から直接的に返金してもらうことには繋がらないことがわかりました。

だとすれば、警察に詐欺の相談することにはどんなメリットがあるのでしょうか?詐欺被害に遭った人が一番求めているのが、詐欺師からの返金でしょう。これが実現しないとなれば、意味がないようにも思えますが、警察への相談にはしっかりとメリットがあるのです。

示談交渉に持ち込める可能性が高まる

警察に被害届を出した・告訴状を出したというとき、詐欺師側としてはそれをなんとか取り下げてほしいと考えるもの。有罪となれば、10年以下の懲役という刑罰が待っているからです。

そのため、告訴状などを取り下げてもらう代わりに返金に応じる、といった示談交渉に持ち込める可能性が高まります。

状況によっては大々的に動いてくれることも

緊急性がない、被害が軽微である、犯人がわからない、といったようなことがあれば、警察はなかなか動いてはくれません。しかし、同じような被害を受けた人がたくさん相談に来ているなどの事情があれば、警察としても放置しているわけにはいきません。

これ以上の被害を防ぐためにも、警察が大々的に捜査に出てくれる可能性もあるのです。被害を受けたということを、警察に記録してもらうことが重要というわけです。

詐欺被害に遭ったら警察に詐欺の相談する前に、弁護士に状況確認を

警察に詐欺の相談した時のメリットや、注意点、動いてくれないときに考えられる原因について見ていきました。詐欺の被害に遭ったとき、警察に詐欺の相談するか、弁護士に相談するか、どうすればいいのかよくわからないという声をよく耳にします。

確かに、警察と弁護士では対応してくれる範囲が異なります。ただ、警察に詐欺の相談する場合でも、まず弁護士に相談しておいて、警察に詐欺の相談に行ったときに対応してもらえる事案なのか、対応してもらうためにはどういったことが必要なのか、などのアドバイスを具体的に受けましょう。

まずは弁護士に相談することが、解決への早道と言えます。